ヒトは進化の過程で、四足獣から分化し「直立二足歩行」という形を手に入れました。
この二足で立つという構造は、重力の中でバランスを取りながら生活するために生まれた、非常に高度な仕組みです。
しかし、便利さや生活習慣の変化によって、私たちはこの「動く仕組み」を正しく使わなくなっています。
先日、動物園で骨格標本を見て改めて感じました。
ヒトと動物の骨はとてもよく似ており、筋肉の走行もほとんどが共通しています。
ヒトの体には今も“四足獣の名残”があり、四つの肢を使う動きの要素が深く刻まれています。
だからこそ、二足歩行で問題が出たときは「四足の動き」に戻ることが大切なのです。
赤ちゃんを思い出してみてください。
最初から二足で立てる子はいません。
寝返り、ずり這い、ハイハイといった“地面を使う動き”を通して、体幹や手足、背骨、骨盤の連動を学んでいきます。
その発達過程を経て、初めて二足歩行ができるようになる。
つまり「ハイハイ」は、立つための準備運動なのです。
けれど、大人になると一度できるようになった動きを「もう練習しなくてもいい」と思ってしまう。
歩くことも、しゃがむことも、立ち上がることも、日常の中で自然とやっているようで、実は正しい使い方を忘れていることが多いのです。
その結果が、腰痛や首の痛み、肩こり、膝の痛みといった形で現れます。
体の不調は、使い方のエラーです。
正しく動けていないからこそ、痛みというサインが出ている。
だから「痛みが出た=動かないほうがいい」ではなく、
「痛みが出た=正しく動かし直すタイミング」なのです。
実際、四足の動きを取り入れたリハビリやトレーニングは非常に効果的です。
手と足を地面につけ、体幹を安定させて動くことで、背骨や骨盤の協調性が戻り、全身のバランスが整います。
本来、四足で培った安定の上に二足歩行は成り立っています。
つまり「二足で問題が出たら、四足に戻る」──これはごく自然な考え方なのです。
これはスポーツの世界でも同じです。
大谷翔平選手のような世界一の選手でさえ、基本動作を繰り返し練習しています。
「できるからやらない」のではなく、「できるからこそ続ける」。
体を使うということは、日々のメンテナンスそのもの。
放っておいて自然に良くなるものではなく、意識して正しい動きを積み重ねることでしか保てません。
ヒトの体は、使い続けて初めて機能します。
だからこそ、腰痛や肩こりが出たときこそチャンスです。
四足獣のように、地面に手をついて動いてみる。
ハイハイのような動きをしてみる。
それが、あなたの体を本来の状態に戻す第一歩になります。
「思ったときが動くチャンス」。
できなくなったからではなく、できるうちから動きを磨く。
それが健康を維持するいちばんの秘訣です。